好きな短歌を探す　　・・・　高島先生 　

こんにちは、講師の高島です。普段、皆さんは歌集や詩集を読むでしょうか。今回は好きな短歌について紹介します。

明治期の歌人に石川啄木という人がいます。彼が1910年に刊行した初の歌集『一握の砂』の中に次のような歌が収められています。


不来方（こずかた）のお城の草に寝ころびて

空に吸はれし 十五の心


「不来方」とは、現在の岩手県盛岡市のことで、啄木はこの地で中学校生活を送りました。盛岡城の草原に寝っ転がって空を見上げると、15 歳の自分の心が吸い込まれていくように感じられた、という意味の歌ですが、やはり現代語訳よりも元の短歌に味わいがあってついつい愛誦したくなります。

15 歳というと思春期の真っ只中で、様々な不安を抱えて思い煩いながらも、一方では将来へ淡い期待を寄せる、そんなアンバランスな年頃です。

まさに、自分も中高生の頃、色々なことで悩みましたが、その度にこの歌を心の中で口ずさみながら空を見上げた。空を見上げていると、 一瞬だけかもしれませんが、全てがちっぽけに感じられて、雄大な空の中へと、悩みや苦しみが吸い込まれていくような感覚になります。と同時に、そんなちっぽけな存在がひしめき合って世界は動いていると思うと、自分の苦悩も何とか対処できそうな気がしますし、遠く隔たっていた目標にも手が届きそうな気にもなります。この歌は、ある種の忘我の境地へと自分を誘ってくれるだけでなく、目の前の現実と向き合う力も与えてくれるのです。

皆さんも勉強に疲れたら、この歌を思い浮かべながら空を見てリフレッシュしてみてください。そして、たまには歌集を読んで自分の好きな歌を見つけてみましょう。