2021.09.17 | 課外授業
【講師ブログ①】増田先生が語る「ゾウとヒトの共通点」
【講師ブログ①】増田先生が語る「ゾウとヒトの共通点」
講師の増田です。
サイクロプスという怪物を知っていますか?
サイクロプスはギリシャ神話に登場する、1つ眼の巨人です。
この巨人は空想上の生き物と思われていますが、実はモデルがいると言われています。ゾウの頭骨です。
意外なことに、牙をとったゾウの頭骨の形はヒトの頭骨の形にとてもよく似ています。
(色々な動物の頭骨をググってみてください!著作権にひっかかりそうなので掲載は避けます。)
多くの動物の頭骨は、アゴが前に伸び、おでこが斜めになっています。
しかしヒトとゾウの頭骨は、頭の奥行きが短く、額も膨らんだ形をしています。
(ゾウの額は脳ではなく牙を支える構造があるため大きく見えます。)
とてもよく似た頭骨ですが、正面に巨大な穴が空いているのがゾウとヒトの大きな違いです。この穴は眼ではなく鼻の穴ですが、昔の人がこれを見て、
「巨大な1つ眼の怪物だ!」
と勘違いしてしまうのも無理からぬことでしょう。この骨を発見した人はさぞ怖い思いをしたのではないでしょうか。
では、なぜヒトとゾウの頭の形は似ているのでしょうか。
これは「頭を動かす必要が無いから」という理由で説明されるようです。
ほとんどの動物は、頭(脳ミソではなく口)を使ってエサを取ります。
ライオンは肉を噛みちぎり、キリンは葉っぱをむしり取ることで食事を始めるわけですが、どちらも顔がエサに届くことが必要となります。そうなると必然的にコンパクトで立体的に、「エサを効率的に中に運ぶ顔」になっていくわけです。
一方、ヒトとゾウはどうでしょう。ヒトは進化した腕で、ゾウは特徴的な鼻で、頭を動かすことなくエサを口内まで運びます。この場合、頭に求められる機能は噛み砕くことだけ。こうしてヒトとゾウは顎が短くて頭が大きい、似たような形になったのです。
(余談ですが、噛み砕く器官が顔ではなく内蔵にある鳥類や竜脚類は顔が小さいそうです。)
以上、食生活によって動物の顔は変わるという話でした。
参考文献:「顔」の進化/馬場悠男・著/講談社・発行