【今年も賢い生徒さんが気付きました】教科書の二・二六事件記載の疑問点を解説します

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【今年も賢い生徒さんが気付きました】教科書の二・二六事件記載の疑問点を解説します

2021.09.20 | 学習アドバイス

【今年も賢い生徒さんが気付きました】教科書の二・二六事件記載の疑問点を解説します

【今年も賢い生徒さんが気付きました】教科書の二・二六事件記載の疑問点を解説します
【今年も賢い生徒さんが気付きました】教科書の二・二六事件記載の疑問点を解説します


【中学校の歴史教科書が分かりづらい理由】2 26事件編(13分28秒)
(動画は2020年撮影のものです)


2.26事件についての教科書の記載。


「1936年2月26日、陸軍部隊を率いた青年将校が大臣らを殺傷し、首相官邸や国会議事堂周辺などを占拠する事件が起こりました(二・二六事件)。反乱は鎮圧されましたが、軍部がさらに力を強め政府や国民は軍部に反対できなくなっていきました。」(帝国書院(旧版)P219)


毎年賢い生徒さんは質問してきます。


反乱は「鎮圧」された。
でも「軍部の力は強まった」・・・。


どういうことですか?


確かに、文脈的に頭に「?」が浮かびますよね。


しかし中学校では大まかな歴史の流れをとらえることが目的なので、「2.26事件=軍部の力が強まった」という理解で結構です。


少し詳しく話すと、実はこの2.26事件、陸軍の派閥争いという側面があったのです。


当時の陸軍には革新閣僚や財閥と結びついて徐々に総力戦体制を築こうとしていた統制派と、いち早く天皇中心の軍事政権を作ろうとする皇道派の2つの派閥がありました。


 いささか過激だった皇道派が起こしたのが2.26事件だったのです。


そのクーデターの鎮圧に力を注いだのが統制派の軍人たちでした。
事件後陸軍の中心人物は統制派が占めることになります。


そして、「軍部がさらに力を強め」たきっかけはこの統制派による内閣の干渉がきっかけでした。


一次廃止されていた「軍部大臣現役武官制」の復活を、事件後発足した広田弘毅内閣で実現させたのです。


軍部大臣現役武官制とは、陸・海軍の大臣を現役の武官から選ばなければならないという仕組みです。
総理大臣が気に入らなければ軍部大臣が辞職をし、いつまでも大臣を選出しないようにします。
そうすると大臣がいないままでは組閣ができなくなり、総理大臣が辞職に追い込まれるという仕組みです。


もともとは1900年に第二次山県有朋内閣の時に制定されたものです。
第二次西園寺内閣の時に軍隊の増設をめぐって首相と陸軍が対立し、陸軍大臣が辞職。その後後任を出さなかったことで組閣できずに総辞職に追い込まれました。


軍部の発言力が非常に強まる、大日本帝国憲法の欠点でもありました。


これはまずいということで、1913年の第一次山本権兵衛内閣の時に廃止(改正)されました。
予備役、後備役といった現役以外の人も大臣になれる制度に変更されます。


しかし2.26事件をきっかけに、この軍部大臣現役武官制を復活させます。


軍隊の言うことを聞かないと何をするか分からない、また2.26事件に関わっていた将校たちは予備役になっていましたので、このままでは2.26事件に関わった軍人が大臣になる可能性があるのはまずいでしょ、という理屈で統制派が勢いづくきっかけを与えてしまいました。


その後、リベラルな宇垣一成が首相になりそうな時に、陸軍が軍部大臣を出さずに組閣させないということが起こります。


また、ドイツとの軍事同盟に難色を示していた米内光正内閣の時も、現役武官制を利用して倒閣に導き、後の近衛文麿内閣の時に日独伊三国軍事同盟を結ぶに至ります。


これが「軍部がさらに力を強め」た結論の経緯です。


もちろん、歴史に「正解」はありません。
「解釈」があるのみだと思います。


ですので受験を突破するための「正解」を覚えるために一つのストーリーやエピソードを覚えておくのは構いませんが、一人の教師、一冊の本に傾倒しないように注意しましょう。


※地理の教科書はほぼ完ぺきなので丸暗記してテストに臨んでくださいね。

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